若干ネタバレ 浜口倫太郎『私が殺人犯です』

藤原竜也さん主演で映画化された『22年目の告白 私が殺人犯です』の原作本を読了しました。

【あらすじ】

7年前に時効が成立した連続殺人の犯人を名乗る男がその犯行を克明に描いた告白本を出版する――。その男の名前は曾根崎雅人。時効が成立し、法で裁くことができない殺人事件について、その犯行内容を克明に描いた告白本は、著者である曽根崎の容貌の美しさと犯行の残虐性によって一台センセーションを巻き起こし、空前のベストセラーとなる。

以下若干のネタバレ含む

物語は、時効が成立した殺人犯曾根崎がなぜ告白本を出版したかという謎を軸に進む。

当時あと一歩のところまで犯人を追い詰めながらも取り逃がし、あまつさえ、先輩刑事を自分の身代わりに死なせてしまった刑事、読者の揺さぶるいい本を作りたいと願い続けながらも、曾根崎と出会い、殺人犯の告白本を編集することになる女編集者、正義感にあふれTV番組で曾根崎を追及する人気ジャーナリスト――。

それぞれの立場で曾根崎と向き合う彼ら

そして、曾根崎の驚くべき真意とは。

藤原さんの主演で映画になっているということで当初は「藁の楯」のような人間のクズを時効という法律の壁が守る話かと思って読んだのですが、いい意味でその期待は裏切られました。自らマスコミに姿をさらし、被害者遺族を挑発する曾根崎の真のねらいとはなんなのか。ラストで明かされる事件の真相で、彼がなぜ時効成立後7年もたってから、告白本の出版をする決意をしたのかがよくわかります。伏線もきれいに回収され、読後感も悪くない、良質なエンターテイメントです。

最後の最後の1ページで「著者」が「読者」に送った一言のメッセージにもぐっときます。映画はこの原作をどのように消化したのか、その点も気になりますね。最近ではおすすめの小説です。

関連記事

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク