箕輪厚介『死ぬこと以外かすり傷』の違和感

編集者の方の本は結構好きで、島地勝彦さん、松浦弥太郎さん、見城徹さんといくつか読んだことがありますが、箕輪さんの本は見城さんに近い感じですね。

『編集者という病』に似ています。

ただ、ご自身もおっしゃっているように、堀江貴文さんや落合陽一さんなど、そのほかの自分がかかわった著者の生き方や方法論を貪欲に吸収されている方ですから、堀江さんの『多動力』に似ている、という声もあるそうです。(私は多動力読んだことないのでわかりません)

さて、誰よりも動き、そのなかで考え、伝説をつくり、それを人に伝えることで自分をブランド化することで影響力をもち、どんどん他人を巻き込んでいく。いうなれば、「多動力」から「他動力」へといったところでしょうか。オンラインサロンとして立ち上げた箕輪編集室では、月に5940円を払ってでもこの人と一緒に働きたい人たちが1300人もいるのだそうです。

スゴイですね。

「こっちの世界に来て、革命を起こそう」

という箕輪さんの論調は熱くて、人を行動に駆り立てる力があるのも事実です。

本としては、同じ話が出てくるとか、要はホリエモンの多動力そのままだろう、とかいろいろな批判があるようですが、素直に面白かったです。

そのうえで、こういう本を読んだときにはちゃんと立ち止まって考えてみないといけないな、とも思います。

自分にしかできないことをとことんまできわめて、あとは他人を巻き込んで、多くのプロジェクトをドライブしていく。プロデューサーとしていろいろなプロジェクトにかかわる。

そんな生き方は確かに素敵です。

ただ、こういう素敵な本を読んだときは素直に感動する以外にも、やることがあります。それはほんとかな?と疑うこと。

例えば、箕輪さんの1300人のサロンメンバーが箕輪さんのようになりたいと思ったら、自分も圧倒的な努力をして実力をつけ、サロンをつくってメンバーを集める必要があります。そのメンバーもその主催者のようになりたかったら、、、、というかたちでネズミ算的にメンバーが必要になってきますが、果たしてそれって、もつのかな?とか。

このサロンビジネスってちょっと不思議な感じがします。古くはオタキングの岡田斗司夫さんがフリックス、という名前のサロン?で自身のコンテンツをつかって自由にビジネスをしていいよ、という会員制の取組を行っていましたが、箕輪さんの編集室は報酬が発生しているのか、それとも手弁当で本当にお金を払って経験を買っているのか、もう少し調べてみないと適当なことは言えませんね。

はじめに : FREEexなう。
 FREEex財団(仮)のサイトにようこそ! 「FREEex(フリックス)」の語源は、FREE + extension 。岡田斗司夫の造語です。 FREE(自由) を extension (拡張)する。 アーティストや思想家、作家などクリエイターたちが生み出す価値あるコンテンツ、人類を幸せにできるコ

あと、会社に黙ってでもやりたいことをやって、伝説をつくれ、とうのも、出版業界ならではな感じもします。

例えば、車をつくる、原発をつくる、橋をつくる、人の命を預かる、そういうった組織や職場では、ある程度の統制も必要でしょうし、個人がスターになりにくい、もっといえば、属人的な部分を取り除くことで、高い精度をだしている、という職場だってあるはずです。

もちろん、そんななかでも常識や前例を疑い、熱狂しろ、というのが著者の主張ですから、それはわかるのですが、それを強烈に主張することで、何かこう「組織のなかで守るべきものを守っている」ことを相対的に軽んじている感じがしやしないかな、と。

箕輪さんは会社で働くメリットを何度もあげているので、組織や会社をディスっているわけではないのですが、なんかちょっと小さな違和感がぬぐえないところがあります。

王様は裸だ!といった子供が「いい仕事した!」というオチになる寓話の世界ではあるのでしょうが。

王様の権威って、そもそも、そういう「お約束」で成り立っているもので、それが人を束ねたり、動かしたりすることで、国とか組織ってできている。

じゃあ、裸だってばれた王様が、恥ずかしくなって国を治めるのをやめてしまったら、

子どもは民衆を統治できるんかい?軍隊を指揮できるんかい?官僚組織を動かせるんかい?

私がこの本をよんで、すげー面白かった、と感動したあとに、ちょっと小骨のようにひっかかった違和感はもしかしたらそのあたりにあるのかもしれません。

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