森見登美彦『太陽と乙女』太陽の塔はいったいどこに立っているのか?

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太陽の塔をみに、京都へ行くの巻き

森見登美彦さんの『太陽の塔』を読んで、京都に飛んで行ったのは確か2004年くらいのことだったと思います。同作が日本ファンタジーノベル大賞を受賞したのが2003年の冬で、真夏に太陽の塔に会いに行ったので、おそらくは翌年でしょう。

作品のなかでは、主人公は叡山電車にのって太陽の塔を見に行きます。当時(いまも)京都の地理にも、もちろん大阪の地理にもまったく詳しくなかった私は「叡山電車にのって太陽の塔を見に行く」と言い残して適当に出発し、家族もとくに興味がなかったので適当に送り出してくれました。

しかし、当然、太陽の塔は大阪万博の遺構ですから、「大阪」にあります。京都にはありませんし、叡山電車に乗っても太陽の塔には行けないのです。

行き当たりばったりな私が、そのことに気が付いたのは叡山電車に乗ってからであったという、今思えば若さゆえの過ち、シャア少佐もびっくりな適当さでした。

太陽の塔を妄想で学習院離宮界隈へ

なぜ、『太陽の塔』では、さま太陽の塔が京都にあるような書かれ方をしていたのか。その辺のことが、今回発売になった森見登美彦さんのエッセイ『太陽と乙女』に書かれていました。所収の「太陽の塔は「宇宙遺産」」から引用します。

しかしながら、比叡山のふもとでくすぶっている一介の学生としては、情熱の赴くままに太陽の塔のもとへ連日の行脚を繰り返すわけにはいかない。そんなことをしていれば、京都での生活がおろそかになって、ただでさえ冴えない成績がますます冴えないものになる。<中略>大阪へ出かけずして太陽の塔への愛情を思うさま表現する苦肉の策として、私は太陽の塔を京都の修学院離宮界隈へもってきてしまうことにした。そんな突拍子もない思いつきをもとに、畏れ多くも『太陽の塔』と題した妄想小説を書いた

妄想だったのかよ!

いまさら、『太陽の塔』を読んで、京都に太陽の塔を見に行くひとはいないとは思いますが、大事なところなので、繰り返しておくと太陽の塔はがあるのは大阪です。

以下に順路を示しておきます。念のため。

新幹線でお越しの場合 新幹線「新大阪駅」下車。 地下鉄御堂筋線(北大阪急行線)で「新大阪駅」→「千里中央駅」へ。 大阪モノレールで「千里中央駅」→「万博記念公園駅」下車。(万博記念公園HP)

森見テイスト全開、両系統が好きな人にはお勧め

ちなみに、このエッセイは、デビューからいままで、さまざまな媒体で書かれたエッセイをまとめたもので、新聞や雑誌などメディアの性格や趣旨が違うので、読みごたえはありますが、森見節を期待するとちょっと外れます。森見さんは「太陽の塔」のような阿呆な叙述で人気がありましたが「きつねのはなし」のようなミステリアスな物語も書ける作家で、エッセイではその両方のテイストが出てりでなかったりするので、両方すきなひとにはお勧めですが、「走れメロス」は好きだが「宵山万華鏡」はちょっと、という方は、テイストの違いに苦しむかもしれません。

これもまた、個人的な感想ですけれども。

森見ファンにはお勧めです。

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