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万年筆の魅力とは
このブログでは万年筆もトップの固定ページで紹介していますが、その魅力について簡単ですがご紹介したいと思います。
万年筆はそもそも、昔は公文書などでも使われていたフォーマルな筆記用具です。契約などの人生の大事には鉛筆などではなく、万年筆を使って署名するものでした。
これは、なぜかというと。
万年筆で書いた文字は「消えなかった」からです。
昔の万年筆のインクは第一鉄イオンが酸化して第二鉄イオンになり黒色沈殿を起こすタンニン酸化鉄インクで化学反応して色を定着させていたので、消えなかったのです。
しかし、これは「錆びている」ということなので、キャップの閉め忘れなどで、ペン先でインクが固まったりしてしまうと大惨事。より利便性の高いボールペンの登場。環境への配慮などから、徐々にこのタンニン酸化鉄インクは使われなくなり、いまでは大手メーカーでもこのインク(古典的ブルーブラックと呼ばれています)はほとんど作っていません。
あるのは水性の顔料インクと水性の染料インク。どちらも水性ですが、顔料インクは顔料が水に混ざっているのですが、顔料の粒子自体は水に浮遊した状態なので、水が乾けば、顔料自体は耐光性、耐水性があるという代物。いまでいうカーボンインクなんかがこれにあたります。
染料インクは、染料が水に溶けているので、水がつけば流れますし、耐光性も弱い。公文書などにはもちろん使えません。
ですが、染料インクは圧倒的にお手入れが楽ですし、いろいろなカラーバリエーションが楽しめますから、今の万年筆のインクで多いのはこの染料インクです。
ですから、現代の万年筆は「水がつくと消えて」しまうのです。
このほかにも、万年筆は、値段がびっくりするくらい高い(K自動車買えるんじゃ)ものもありますし、落としたときに万が一ペン先が下になっていたりしたら一発でおしゃかになるという扱いにくさ、など欠点を上げてくれといえば、それこそ村上春樹的にいえば「そのリストはかなり長いモノになる」ことは避けられません。
しかし
それでも、万年筆には、ほかの筆記具にはない魅力がたくさんあります。
前置きが長くなりましたが、その魅力を3つご紹介しましょう。
様々なインクを使うことができる
これは、今の染料インク全盛時代のメリットといえなくもありませんが、万年筆はコンバーターと呼ばれる器具を使うことで、使うインクを自由に選ぶことができます。ちょうどねじ式のスポイトのようなものが万年筆の中に内蔵されていて(あるいはアタッチメントとして取り付けができて)ボトルに入ったインクを吸い上げるのです。
パイロットの色しずくシリーズが代表ですが、様々な色味のインクが発売されており、その色味の自由度はボールペンでもなかなかかないません(パステル系なんか色はボールペンの方が豊富ですけどね)
ディープでコレクタブルな世界が広がっている
万年筆は、筆記用具であると同時に嗜好品でもあります。ボールペンなどに比べて長い歴史がありますし、後で述べる理由によって、末永く使うことが前提になっているので、その装飾性はほかの文房具の比ではありません。
自分にあった一本が必ず見つかる。色や太さ、軸の素材からペン先のデザインに至るまで、万年筆のバリエーションは千差万別。様々なブランドが存在する万年筆は大人の嗜好品なのです。
使い続けることで自分だけの書き味が手に入る
最後のこれが万年筆の魅力の最大の特徴であり、私がシンプルライフハックのなかで万年筆をお勧めする一番の理由です。
万年筆は使うものではなく「育てる」ものなのです。
どういう意味かといいますと、万年筆に使われているペンは普通は金です。これは古典的ブルーブラックを使われていた時代、金は錆びることがなかったため、またやわらかく加工が容易だったため、万年筆のペン先は金が使われていました。ここにイリジウムと呼ばれる合金を溶接し、そのイリジウムを細く研ぎだしたり。太いまま仕上げたりすることで、万年筆のペン先の細字とか太字、といったものができあがるのです。
このペン先は、出荷状態ではもちろん何の特徴もない既製品ですが、持ち主が使っていくにしたがって、わずかずつですが、紙とこすれあわされるたびに削れていき、その人のペンの癖にそって形が変わっていきます。
これが万年筆が育つ、という意味で、長年使い込んだ万年筆は、その人にとって唯一無二のパートナー。万年筆と女房は人に貸すなといわれるほど、別の人が使えば、「書きにくいね」と言われる万年筆も持ち主にとってはかけがえのない一本なのです。
ちなみに、これを時間をかけずに、すぐに自分にあった書き味の万年筆が欲しいという場合にお願いするのが「調整」というものです。これは万年筆の専門店などでやってくれる場合がありますが、職人さんが、その人の書いているところをみて、癖にあわせてペン先を研ぐことをいいます。
現在ですと神戸のペン&メッセージさんが受け付けています。
ただ、やはり本当なのは自分で時間をかけてペン先を育てることです。そのためには一日でもはやく万年筆を使い始めるしかありません。
以上、明日から万年筆を使いたくなる3つの理由でした。