ネタバレ(2)東野圭吾『聖女の救済』 ネタバレ含む

典型的なハウダニット

子どもができないことを理由に離婚を切り出された妻が、夫の殺害を決心する、そんなシーンから書き出される東野圭吾の『聖女の救済』

犯人は冒頭から明示されていて、その犯行方法を推理していく典型的な「ハウダニット」モノです。

登場人物は

IT企業経営者で、被害者となる真柴義孝

その妻で、容疑者となる真柴綾音

孝義の愛人で綾音のもとで働く若山宏美

冒頭で、子どもができないなら離婚をすると義孝に宣告された綾音は彼の殺害を決意。しかし、義孝は綾音の留守中に、一人で毒の入ったコーヒーを飲んで死亡。彼女にはその時点で鉄壁のアリバイが存在しました。

捜査は誰が、どのタイミングで毒を入れたのかに焦点を絞って行われます。殺害の前日の晩に愛人の宏美と義孝は二人で、同じ珈琲を飲んでいることが明らかになりますが、この時は二人とも異常なし。毒物は、義孝の飲んでいた珈琲とそれをいれるときに使ったフィルター、そしてヤカンからも検出され、自然と当初は最後にそれらに触れたとみられる愛人の宏美に嫌疑がかかります。

しかし

彼女は義孝の子供を妊娠しており、綾音と離婚してこれから自分と結婚するはずの義孝を殺害する動機がないこと
死体の第一発見者である宏美が、証拠となるケトルに残留した毒物を洗うなど処分しないのはおかしい
いつ、どうやってどこに毒を混入したのか、という決め手になる方法が判明しない

などの理由から決定打を欠き、捜査は難航。そして最も強い殺害動機を持ちながら、事件当日北海道の実家に帰省し、完全なアリバイのある妻の綾音に果たして義孝殺害は可能か?という謎に向かって物語は進んでいくのです。

以上が、『聖女の救済』のあらすじです。以降はネタバレを含む感想になります。

いつも書くことですが、未読の方はぜひ本書を買って読んでみてください。ネタバレ部分に書くいくつかの違和感はあるものの、最初から最後まで一気に読み通し、トリックの意外性、叙述の巧みさはお値段以上です。ぜひご一読されることをお勧めします。

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