「おとうさん、モリタくんね」
本日、帰宅し玄関のドアをあけると、突然、飛び出してきた息子がそういった。
「わかった!おとうさんは、モリタくんだ!」
即答するも、この時点で「モリタくん」についての知識はゼロである。しかし、最近、よく話すようになったとはいえ、帰宅して、そくごっご遊びに誘ってくれることはまれである。このチャンスを失うわけにはいかない。
おそらく、自分の知らない最近のテレビ番組、子どもコミュニティにおいて、「モリタくん」の名はとどろき、知らぬものとてない人気モノに違いない。
ここで話の腰をおるようなことがあってはならない。
そう、知っているとも「モリタくん!」
しかし、このままノーヒントでは、さすがに厳しい。
それとなく、周辺情報をあつめ、モリタくんを演じきってみせる。
まずは、主人公との関係性から、そのキャラクターについてのヒントが得られるに違いない。そうだ、息子は何を演じるのだろうか、それを確認すれば、ストーリーの大枠はつかめるはずである。
「おとうさん、モリタくんね
あやとくんは、何くん?」思い切って聞いてみた。
「ドラえもん!」
………
「うん、わかった おとうさんは
のびたくんだね」
その後、のび太くんを完璧に演じたことはいうまでもない。