妖怪ふとん返し誕生

妖怪まくらがえし

ゲゲゲの鬼太郎のエンディングで登場する、この妖怪、まくらの位置をすげ替える、という一見害の少なそうな妖怪であるが、じつはまくらの位置を変えられてしまうと、寝ている間に離れていた魂が正しくもとに戻れなくなる、というおそるべき弊害があり、じつはすげー怖い妖怪なのだ。

それを知った小学校時代にワタクシは本気で枕をテコでも動かすまいと、ひっしと抱きしめて寝たものである。

大方寝相の悪い子どもに辟易した大人が考えた教訓型の怪異ではないかと思われるが、その効果はてきめんであったと言える。

さて、我が家では、畳に布団三枚の川の字で寝ているのであるが、落ち着いて本など読もうと思えば、当然夜中になるわけで、寝る時間は子ども妻、ずんと遅れてワタクシとなる。そのため、息子が所定の位置ではなく、ワタクシの布団でがん寝、ということも珍しくない。

ここで「かわいい」とエポケーして、幼児の布団で寝ていては、風邪をひいてしまう。「かわいい」は「かわいい」。「さむい」は「さむい」。まったく別の概念である。これを混同することを間違っても愛情などと思ってはいけないのである。そこで、息子を起こすことなく布団を剥ぎ取り、幼児布団に掛け替える、という技が求められるのである。ほぼ毎晩。

この場合、万が一にも起こしてはいけないので(あとがとてもめんどくさいので)まず、幼児布団を重ねがけし、しかるのち、大人布団を引っ張る。芸能人かくし芸のテーブルクロス引きばりの思い切りの良さが求められる。うまくすれば、敵はまったき気がつかず、寝返りすら打たない。

翌朝起きて、なぜ俺はお父ちゃんの布団ではなく、自分の布団で寝ているのだろうと思っているはずである。

ここに教訓的な寓話を打ち込み、敵を木っ端微塵にするチャンスが生まれる。

新たな妖怪ふとん返しの誕生だ。

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