人生初バリウム

人生初のバリウムについて書き残しておきたい。

バリウム。Wikiさんによれば、正確には硫酸バリウムといいバリウムイオンと硫酸イオンのイオン結晶化合物であり、X線検査の造影剤として使用されるほか、その化学的安定性から、塗料、プラスチック、蓄電池等に利用されている。らしい。

造影剤とは、X線検査の際に、それを飲むことで臓器の形状を見えやすくるするものと考えればいいだろう。

胃は肺と違って、「さんはいで膨らませて!」という芸当はできないため、バリウムを飲む前に、白い粉のような粒のような発泡剤をのみ、胃を膨らませる。その後、バリウムを投下する。

そうしてX線をよく吸収する液体で胃を覆うことで、ほどよく広がった胃腸の様子をX線カメラが写し取ることができるのである。

35歳以上のよいこのお友達は、きっと既知のことと思う。

自分は今日、初めて体験した。

大人の階段を上ったといっても過言ではない。
バリウムこそ、大の大人に許されし医療用ドリンクといえよう。

まず、第一に、こみあげてくるなにものかを必死で押しとどめる
ぐっと耐える。口をついてでたら、それはもうおしまいだよ、という
ことをぐっと耐える。これは確かに大人にしかできない芸当である。
この「万感に迫るこみあげ感」を20歳やそこらの青二才に耐えれるとはとても思えない。

未体験の方のために、付記すると、発泡剤をのむと胃の中でよく振ったペプシを一気に二缶くらい一気飲みした感で猛烈にげっぷがしたくなるのである。

これを耐えきらねば、この検査はできないのである。
万が一げっぷをしてしまうと、胃は一瞬でしおしおのぱーとなり、撮影は不可能となる。一瞬の油断もゆるされない。

そして、第2に、宇宙遊泳のごとき、アクロバティックな撮影である。
技師から繰り出される指示に的確にこたえ、ダイナミックに回転する診療代のうえで、身体をねじり、ひねり、身もだえしながらも的確に要求にこたえる、しかもこみあげてくるものをこらえて、という芸当も、10年以上サラリー的なパーソンを続け、身に着けた職業的俊敏さとでもいうべきものであり、大学を出たばかりの青二才に、あれだけの理不尽な指示をてきぱきとこなせるとはとても思えない。

これも補足すると、レントゲン検査は、いろいろな角度からX線で胃を撮影するのだが、カメラは固定されているため、寝台の方がいろいろな角度に動く仕組みになっている。その動きはなかなかダイナミックで、NASAの宇宙遊泳もかくやであるが、さすがに360度とはいかないため、足りない回転は、被写体である我々が身をよじって調整しなければならない。微妙な塩梅が重要らしく、技師の指示も「はいそこ、ちょっとローリング!もうちょっと右、手は頭の後ろに!」などと細かいうえに具体的すぎてすっと頭に入ってこない。

しかも、すべての苦行を乗り越えたのちに待っているのは、下剤である。
冒頭に書いた通り、X線検査のほか、バリウムはプラスチックや蓄電池、塗料に使われる。

明らかに飲み物ではないものばかりである。

というか明らかに身体に悪い。

しかし、そこで立ち止まるわけにはいかないのである。
なぜなら、これは健康と家族を守る戦いなのだ。
まずいとか、げっぷがしたいとか、なんで蓄電池に使われているものを飲むの?とかそんなことを言っている場合ではないのである。

身体に悪くても、さらに大きな悪を撃つために、バリウムを飲み干さねばならない。つまりこれは必要悪なのだ。大を活かすために、少を犠牲にするのは止む負えないのである。

可能性をまえにしり込みする青二才どもと違い、有限の選択肢のなかから、よりベターなものを選ぶことが人生であると気が付いた、大人にしか、できない芸当である。

バリウムこそ大人のための飲み物であると声を大にして宣言したい。

(ほんとうはちょっとげっぷしました、ごめんなさい)

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