劇場版「Fate/stay night [HF]」ヘブンズフィール第2章を観たオッサンが切に願うこと(ネタバレあり)

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ついにブラック桜が降臨

冬木の街で10年に一度行われる聖杯戦争を描いたfate。そのなかでもヒロイン桜を主軸とするヘブンズフィールの劇場版第2作品となる今作は、前回、セイバーが柳洞寺で謎の影にからめとられて消えた直後からスタート。

セイバーを探す士郎と、その身を案じながらもセイバーがいなくなったことで、もう士郎が危険な目に合うことはなくなると期待する桜。しかし、士郎はいまだ健在の臓硯と彼が操る謎の影を倒すため、戦いを続けることを決意。

しかし、その決意が悲劇の分岐点、彼の決意は桜を苦しめる結果となります。

Fateプレーヤーにとってはいまさらなネタバレですが、セイバーを取り込んだ謎の影は、臓硯と行動を共にしていたかに思えましたが、実はこれは桜自身の影。間桐の魔術によって、聖杯の中身と外界をつなぐ門となった桜が無意識下で操っていたものでした。

刻印虫の影響で生きているだけで、魔力を吸い上げられ、そのために無意識下で影をつかって人を喰っていた桜。徐々に症状が進み、慎二の悪意によって、ついに士郎の前で力が暴発。聖堂教会での治療によって一命はとりとめるものの、残された時間はわずかとなり、小康状態のなかで訪れたつかの間の幸せも長くは続きません。

夢遊病のように街にでて、人を襲う桜はギルガメッシュとの戦闘で二度目の能力の暴走を許し、数十人の人間を喰ってしまいます。

それに気がついた士郎は臓硯から桜を殺すことを依頼され、一度は試みるも、断念。

全体を生かすために少数を犠牲にする正義の味方、それは切嗣を目指す士郎が憧れる正義のありかた。

しかし、桜だけの正義の味方になるということは、世界にさらなる犠牲を強いること。これまでの自分を裏切ること。

それに気がついた桜は「先輩の大事な信念を自分のせいで裏切らせてしまった」という自責の念にから、間宮家からさる決心を固めます。しかし、道元を止めようと戻った間桐の家で、再び自分を犯そうとする慎二を殺してしまったことでついに自我が崩壊。アンリマユに取り込まれ、影と一体化してブラック桜が降臨したところで、エンディングを迎えます。

桜だけの正義の味方とは

というわけで、中二といえば中二な展開ではありますが、

そしてまた、よくあるといえばよくある展開ではありますが

それをうまく描き切った、本作、見事でございました。

淫蕩の限りをつくした大量殺人鬼が、世界一清らかな心をもった女の子で、その子が「先輩!」と呼んで縋り付いてきたら、正義の味方の君はどうするね?

という古式ゆかしい命題が、士郎先輩には降りかかることになるわけです。

いやー奈須先生、本当にお上手でした。桜は悪くない、ということをこれでもかというくらいに読者には事前にインプットしておいて、これでもかこれでもかと桜を不幸に叩き落しておいてからのつかの間の士郎との幸せな時間。

そして、そこから物語上強制的にぶっこ抜いていく展開の妙。ヘブンスフィールこそ、丹念に3部作で描かれる劇場版として(しかも地上波ではなく)映像化されたことは本当に同慶の至りというべきです。

それにしても、この命題。

結構使い古されているとは思うのですが、それでもここまで描けるのは、設定の妙と物語の展開、キャラクター造詣の勝利ではないでしょうか。

外面だけなぞれば、いわゆる「世界系」と同じです。「君と世界のどちらをとるか」ということに優しいだけの主人公が悶々とするあれ。

結局どっちも!とか、君!というオチになり、じゃあ世界どうすんだよ、というところは、主人公の機転やら、ヒロインの自己犠牲やらで、軟着陸することになる、というのが多いパターンですね。

私も長らくこういった作品を愛でておりますが、

「じゃ。世界!」

という例はいままであまり見たことがありません。

それはそれで斬新だと思いますが、それじゃ正真正銘話になりません。

それでも生活に軟着陸する二人をみてみたいみてみたい

ただ、無粋を承知でいえば、こういう二者択一の場合で、ヒロインが前科者であった場合(この表現が適切かどうかわかりませんが、すでに現実世界で許されない程度の罪を犯してきてしまっている場合)どうしてもヒロインも救われる、というエンドは難しいんだろうなと思います。

桜エンドがどうなるか、ほんとにしらないので、そこはググらずに2020年を迎えたいとは思いますが、大量殺人者という事実と、崩壊する体、というのは現実なわけで、生活なわけで、それをどうにかして軟着陸させても、二人が幸せに暮らす、というのは難しい。ならば、士郎にぶん殴られてちゃんと叱ってもらって、魂だけは清らかなまま、救済されて死んでしまう。そういう流れが一番きれいに落ちます。

と、このオチでたぶん大学生くらいまでの自分ならばOK。名作認定です。

でもここまでオッサンになると、生活を始めてしまうと、別の落ちが観てみたいなと思います。

桜も生きている。非常に難儀な後遺症があるかもしれないし、自責の念で元の彼女ではないかもしれない。それでも、士郎と彼女がなんらかの生活と呼べるものを力業でも継続している、もしくは継続していくことが想像されるラストがみられるとうれしいのですけどね。難しいと先ほど書いたばかりですが、難しいからこそ観てみたい、思いつかないからこそ期待したい。

このままだと桜というのは、その純粋さを際立たせるために、とにかく不幸になって、最初から死ぬこと以外の救済がない、というキャラクターになってしまう。それはちょっとあんまりじゃなかろうか、と。

ヘブンスフィール第2章を観た段階で、第3章のオチをほんとに知らない一オッサンとしては、この薄幸なキャラクターの感動のラストよりも、現実の生活への軟着陸をみてみたいと思うのでした。

桜の木の下で思い出す、とかそういうラストはやめてほしいなあ。

(じゃあ助かって、二人で桜の木の下で微笑まれたら、喰われた数十人どうすんの、ということになるわけですが、その時こそ、桜だけの正義の味方の出番だろ、物語上のキレイなオチとか、ぶち壊してこの子を現実で幸せにしてくださいよ、先輩、と無茶ぶりだけしておきます)

追加、その他の見所

セイバーオルタ強すぎ

アインツベルンと臓硯の戦いに参戦したセイバーオルタの強さはハンパナシ。もともと最強のクラスで現界しながらも主人公ハンデで実力を発揮出来なかったセイバー。

その枷が解き放たれたブラックセイバーの強いこと強いこと。目の色と合間ってお前はスーパーサイヤ人かと。もうあれだけ手こずったバーサーカーを12回ブッ飛ばしてもおつりがきます。

シリーズ屈指のド派手な戦闘シーンです。

安定したワカメのカスぶり

はい、お兄様ですね。声優の神谷先生のさすがな演技で今回も安定したかすっぷりでした。ブラック桜降臨の最後のトリガーをひくあたり、最後まで仕事きっちり。隙がありません。

まさに情状酌量の余地もなく。逆に、家に来た当初の桜には優しかった、なんてエピソードがあった方がまだブラック桜降臨に説得力があったのでは、と思えてきます。そもそも、帰宅した桜を襲ったら、ライダーに狩られるかも、という頭もないワカメ。

ありがとうワカメ。

最後にスカッとしてエンドロールに入れたのはあなたのおかげです。

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