閃光のハサウェイ ネタバレなし解説② マフティーのねらい 何のために閣僚を暗殺するのか

閃光のハサウェイについては以下の記事でも書いたとおり、小説未読の状態で劇場版第1作を観劇したため、ハサウェイの戦いのクライマックスを私はまだ知りません。この記事では、結末未読の状態で、ハサウェイの戦いについて考察していきたいと思います。

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マフティーの目的は「例外なく」人類を宇宙にあげること

マフティーことハサウェイの反地球連邦政府の活動の狙いは「地球人類を例外なく宇宙にあげること」です。これは地球の汚染が進む中シャア・アズナブルが小惑星アクシズを地球に落とし。地球を寒冷化することで地球に居続ける人類を粛清しようとしたことと目的は同じです。

しかし、現状第1作までのマフティーは、その目的を掲げながらやっていることは地球連邦政府の閣僚の暗殺です。劇中では18人がすでに犠牲になったというセリフがありましたが、閣僚多すぎじゃない、と思ったのは私だけでしょうか。ちなみに、日本の場合は内閣総理大臣を除く閣僚の数は原則で14名と決まっており、必要があればあと3人は任命できるとされています。つまり18名がMAX。地球連邦政府ともなればかなりの数の閣僚がいるのでしょうが、日本の規模だったらすでに全滅ですね。

閣僚を暗殺しても人類は宇宙に上がらない

もとい、今回の映画をみても分からなかったのはマフティーの目的と手段の乖離です。地球連邦政府は地球に住む人間の選別を進めており、不法滞在とされた人民をとらえて宇宙送りにするマンハンターなる組織まで登場します。その意味では、地球に住む人類の数を減らしているともいえます。もちろん、マフティーの目的は「例外なく」人類が宇宙にあがることですから、特権階級である地球連邦政府の閣僚を暗殺しているという理屈はわかります。

ただ、これらの閣僚がどのような選出プロセスを経ているのかわかりませんが、間接選挙であれば、直接選挙であれ、最悪世襲であったとしても、ポストが一時的にあくだけで、その場所にはまた別の人間がつくだけのことです。いくら暗殺を繰り返しても「この仕組み」を壊すことはできませんし、閣僚を暗殺しても地球人類が宇宙に挙がる結果にはつながりません。

小説も未読で、劇場版も第1作を見ただけの段階ではハサウェイの真意はわかりませんが、この矛盾は気になるところです。

シャアの理想とアムロの意思を継ぐもの 矛盾こそハサウェイ

しかし、この中途半端さがハサウェイの限界というか、らしさなのではないかとも考えます。どういうことかというと、ハサウェイはシャアの反乱の際に、地球に隕石を落とし寒冷化させる、というシャアの理想に触れています。そして、その理想に共感し、彼のもとを去ったクエス・パラヤをハサウェイは引きずっています。地球に生まれたハサウェイに「お前みたいのを生んだ地球を壊さなきゃ救われないんだよ」と叫んだクエスは、最後はハサウェイをかばって戦死します。

地球を汚染する人たち、地球の重力に魂を引かれている人たちがいなくならない限り、悲劇は起きることをハサウェイはよく知っているのです。

一方で、そのシャアの反乱を阻止したのはアムロの駆るニューガンダムと、そのニューガンダムに搭載されたサイコフレームによる「人の思いの奇跡」でした。地球を寒冷化させるための降下するアクシズを物理法則を超越して阻止した光の帯、サイコフレームの輝きは、ハサウェイの心に強い印象を与えたはずです。人の心の光を見せることにこだわり、最後までシャアと戦ったアムロ。ハサウェイがその乗機にガンダムを選び、クスイーというニューガンダムを継ぐ名前をもったモビルスーツの登場していることもアムロの後継者が自分であることを強く意識していることがうかがえます。

人の想い その光の一閃を描くことができるのか

シャアの理想とアムロの想い、その二つに触れたハサウェイは、反地球連邦政府運動に身を投じながらも、地球に壊滅的な打撃を与える破壊的な行動ではなく、人の心を照らす一閃の光となることで、人類の覚醒を促している。その鮮烈な光ことが「閃光のハサウェイ」というタイトルに込められた富野監督の想いではないか、と思っています。そしてそう考えれば考えるほど、「地球連邦政府の閣僚暗殺」というのはマフティーのすることなのか、シャアの理想に達する道なのかがわからなくなってくるのです。劇中でも、ハサウェイは知り合った謎の少女「ギギ」に「マフティーのやり方、正しくないよ」と言われています。

ハサウェイの物語があと2作でどのように変転するのかはわかりませんが、マフティーが掲げる高い理想と、その実現のための手段のギャップが解消され、人の心に残る光の一閃を見せてくれることを願っています。

次回はそんな閃光のハサウェイで無料公開されているアバンタイトルとオープニング15分とちょっとだけ本編の内容も踏まえながら、登場人物3人に光をあてて解説していきたいと思います。

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