キャリアコンサルタントの資格を取得するためにはこちらの記事でもご紹介したとおり、受験資格を得るために140時間(今後150時間に増える見込み)の認定講座を受け、実技と学科の試験に合格しなければなりません。
ある程度の投資も必要ですし、時間もかかります。
では、そんな苦労をして取得したとして、その費用対効果はどうでしょうか。この資格だけで食べていくことはできるのでしょうか。
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この資格をとっただけで食べられるようにはならない
こたえはNOです。
そもそも、弁護士や税理士のようにこの資格でなければできない業務(業務独占)があるわけではありません。あくまでもキャリアコンサルタントと名乗ることができるのみ。それもそのはず、職業相談や学生相手のカウンセリングはハローワークの職員さんや学生課の職員も普通に行っています。なにもキャリアコンサルタントでなくても相談に乗ってもらうことは誰にでもできてしまうのです。
では、何ができるかというと「キャリアコンサルタント」と名乗ることができます。
名称独占というのは、その名称をつかって商売できるのは、その資格を持った人たちだけですよ、だから、その名称を名乗っている人は「信用できますよ」ということにすぎません。
キャリアコンサルタントはキャリアを考えるうえで必要な助言や指導ができるように専門的な教育を受けた人ですから、キャリアコンサルタントを名乗ることは一定のボトムラインの保障にはなります。それはキャリアコンサルタントの仕事をする人にとっても、キャリアの相談を誰にしようか迷っている人にとっても大きなメリットであることには違いありません。
しかし、それでキャリアに関わる相談業務のすべてを独占できるような資格では全然ないのです。
国家資格化とはいうものの国の需要見込みはあてにならない?
よく、国家資格ということを打ち出して、ママさんにもとれる国家資格、などという打ち出し方をしているサイトも見かけます。それも事実には違いないのですが、国家資格というところだけを強調して、その資格がすぐに何かに生きる、仕事が見つかる、といった感じでPRするのはちょっとどうかと思います。
国が10万人養成計画を推進しているからといって、それは、人生100年時代に雇用は流動化する「だろうし」したほうが「いいから」そういう社会をつくるためにキャリアコンサルタントをたくさん用意しなくちゃ、という極めてマッチポンプ的な政策にすぎません。65歳を超えて働く人が増えたとき、キャリアを相談できる受け皿が必要だ、というロジックは間違っていませんが、そうした人たちがお金をはらって自分のキャリアを相談しにくるかといえば、それはまた別問題です。ちょうど日本のドクターの保持者が少ないからといって、大学院の定員を拡充した末に、大量のポスドクを生み出したように、国の政索は結構あてになりません。10万人もキャリアコンサルタントを要請しても、資格だけはもっていてもそれを仕事にできない人たちが大量にでてくる可能性だってあるのです。
それでもキャリアコンサルタントは絶対におススメ
では、キャリアコンサルタントの資格は取らない方がいいのか?といえば、そんなことはありません。私は、この資格をとってもホルダーとしてそれがすぐに生きてくる仕事はしていませんが、それでもこの資格の勉強はしておいてよかったと自信をもっていうことができます。
その理由は3つあります。
- 人に関わる仕事をしている人なら必ず役に立つ知識が学べる
- カウンセリングの基本が実践的に学べるので人間関係にも役立つ
- 自分の人生をキャリアの視点から考えられるようになる
人事関係の仕事はもちろん、管理職が学んでも役に立つ
キャリアコンサルタントの能力要件は、非常に広範囲にわたります。対人支援の仕事ですから、心理学やメンタルヘルスの基礎知識だけでなく、古典的なキャリア理論についても一通りのことは学べます。また、人事制度や人材開発に関する知識のほか、労務系の関係法令についての知識も必要となりますので、たとえ、日々の業務でキャリア相談などを行っていなくても、一般企業の人事担当者や管理職などが学んでも非常に役に立つ知識やスキルが学べるのがキャリアコンサルタントの資格取得の特徴なのです。
カウンセリングのイロハは日ごろの人間関係にも有効
1の理由と少し重なりますが、キャリアコンサルタントの試験勉強は座学だけではありません。140時間のうちの60時間は実技試験対策として、論述問題のほかに、面談試験の対策も行われます。キャリアコンサルタントの実技試験では実際のクライアント役の方を相手に自分がコンサルタントとして初回の面談を実施するロープレを行いますから、その対策として、講座ではカウンセリングの初歩となる基本姿勢や行動、質問のアプローチの仕方などを学ぶことができます。ここで養われる聞く姿勢は、決してコンサルタントの仕事の場面だけで役立つものではなく、広く日常的なコミュニケーションや人間関係の構築にも役立つものです。
私もこれを受講して、いかにそれまで自分が人の話を表面的にしか聞いていなかったかを痛感しました。(もちろんキャリアコンサルタントが行う「聞く」という行為は、人間関係の構築のため「だけ」ではなく、経験代謝といって、クライアントの自己観察を促すための技法なのですが)。キャリアコンサルタントとしての勉強は人と関わるうえでとても役立つスキルを実践的に学ぶ機会を耐えてくれるのです。
自分の人生を考えるうえでのコンパスが手に入る
最後は自分にとってのキャリアについて考える機会が得られるということです。キャリアコンサルタントの勉強では古典的なものから、最新の潮流に至るまで、「キャリア」についての諸理論を体系的に学ぶことができます。もちろん、試験範囲が広いため、どの理論も概論的な域にとどまりますが、興味をもった理論家の本を買ってみるなど自分なりに知識を深めていくことは十分に可能です。そして、それらを踏まえたうえで、クライアントだけでなく、自分自身のこれまでの人生やキャリアを振り返ることができるのが、キャリアコンサルタント資格の勉強の大きな特徴です。
例えば、キャリアの理論家は様々な角度から、職業人のキャリアのステップを分析・類型化しているのですが、それに照らして、自分はいまどの段階にいるかの、その段階の課題は何か、次の段階にはどのような壁があるのか、ということを考えることができます。もちろん、理論家が類型化した発達段階は万人に当てはまるものではないかもしれませんが、それでも自分の職業人生や、もっといえば人生そのものに対する大きな見取り図が頭にはいっているのといないのとでは、今後の人生を考えるうえで、大きな差が生まれます。
結論 受けるは恥だが役に立つ
キャリアコンサルタントの資格は、取得しただけで食べていけるようになるような資格ではありません。そもそもたった140時間でとれる資格(これは認定講座の授業時間なので、実際の合格のためには授業以外で100時間の勉強が目安といわれています)で、喰っていけるわけがありません。
しかし、この資格は対人支援のスペシャリストの養成を目指しているだけのことはあり、人が働いて生きていくうえでの必要なキャリア、人事労務、カウンセリング等の知識を網羅的に、また実践的に学べる(実技があるので)という大きなメリットがあります。
実技の練習では生徒同士ロールプレイと称して面接の練習をするので、私のような人間にはだいぶ恥ずかしかったですが(;^_^A
この知識とスキルはこれからの人生100年時代を生き抜く誰しもが持っていて損にはならない、それどころか非常に役に立つものだと思います。