ネタバレ(4)東野圭吾『レイクサイド』

さて、それではネタバレを含む感想です。

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なぜ、他の家族が美奈子をかばうのか

この小説の肝はなんといっても「なぜほかの夫婦は俊介の妻をこんなにもかばうのか」という謎です。

当初、俊介は、浮気相手がなかに紛れ込んでいること、そしてその中でも今回の合宿で別荘を提供し、一番発言力もある藤間が美奈子の浮気相手ではないかと考えます。しかし、それだけでは、他の夫婦が彼の意見に従っている理由がわからない。何か、このグループにはそれ以外にも秘密があるのではないかと考えます。

独自に推理を進める過程で、彼は有名中学の受験の不正入試に、このグループがかかわっていることを突き止めます。しかし、それだけでは殺人事件を隠ぺいするだけの強力な結束が生まれるわけはない。なぜ、美奈子をそこまでしてかばうのか。不正入試はその理由になりえない。

そして、彼がたどり着いた結論は一つ。

だれも美奈子をかばっているわけではないということ。

たどり着いた真相

彼らがかばっているのは美奈子以外の人間。さらにいえば、自分が殺人を犯したと言い張る美奈子も、誰かをかばっているのではないか。

誰もが絶対にかばわなければならない相手、そして、この合宿に参加する夫婦が何よりも優先して守らなければならないのは誰か。

それは合宿に参加した子供たち

俊介は子供たち全員が英里子をなんらかの理由で突発的に殺害し、それを知った親たちが全員でかばっているのだと推理します。

ここまでが謎に対する名探偵の推理ですが、この小説が秀逸なのは、そこからもうひとひねりしている点です。

実は、下駄箱の靴の様子などから、犯人は子供全員ではなく「誰か一人」であることがわかています。ただ、大人はそれが誰かわからない。わからないが、誰かの子供であることは間違いない。

ここでの葛藤が秀逸です。誰かの子供が殺人を犯している。自分の子供のはずはない。それは親であれば信じている。しかし、確実にどの親かはその思いを裏切られていることになる。そして誰の子供が犯人か突き止めてしまったら、(自分の子供かもしれない)その時点で全員が隠ぺいに協力することはありえない。そこで、この4組の夫婦(俊介を除いて)は誰が犯人かをつきとめることなく、協力して殺人を隠ぺいすることを誓ったのです。

ラストで暗示される真の犯人

これが、なぜ、美奈子が犯人役を買って出た理由でもあります。ただ、自分のこともが罪をおかしたかもしれない、ということだけでは、連れ子である章太を俊介が見放すかもしれない。しかし、妻が愛人を殺したとなれば、話は違ってくる。だから、彼をだまして、計画に参加させたわけです。これにより、奇妙な団結や妻が犯人役を買って出た理由が綺麗に説明できる。この流れは本当に秀逸でした。

最後のシーンであきらかになる「真犯人」には、賛否はあるでしょうが、個人的には良かったと思います。★★★★★ですね。

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